つま先をなにかに引っかけた。おそらく木の根だろう。少しバランスを崩して、立ち止まる。新月の夜の森は、記憶していた以上に暗かった。背負うデイパックにくくりつけられて、カラカラと揺れる、油の切れたカンテラが恨めしい。充分に油の入ったものだと言われて買ったが、炎はものの十五分で消えてしまった。騙されたのだった。
灯りが途絶えてからは、前方を進む白い背中を目印に歩いていた。迷うことなく木をかわし、おうとつを避け、先へと進んでいく、白いワンピースのぼんやりとした影。
顔をあげると、ちょうどその背中がこちらを振り返ったところだった。二つの目玉がきらりと光ってこちらを見ている。
「いま、行く」
カマラの眼は、獣だ。
101007
『Yaysama』という創作のプロローグのつもりで書いていたもの
『Yaysama』という創作のプロローグのつもりで書いていたもの